単行本 
歴史としての東日本大震災 歴史としての東日本大震災
口碑伝承をおろそかにするなかれ

岩本由輝編
(執筆者) 岩本由輝・河野幸夫
      菊池慶子・佐々木秀之


定価: 本体2200円+税
2013年1月刊
ISBN978-4-88708-405-6
A5判 216頁

在庫あり
大震災からまもなく2年になろうとする今。これから読まれる歴史書!
  この震災を歴史として捉えた最初の本格的な歴史書が完成!


★切り口は「口碑伝承をおろそかにするなかれ」
★科学的なシミュレーションによる「安全神話」より、地元で伝えられていた伝承・口碑
 の方が、はるかに人々の身を守る知恵になっていたことを、様々な史資料を駆使し、又
 科学者も交えて検証された歴史書です。
★最終章では、114年前の「変動地調査報告」で危険とされた地盤の隣接地域にある
 高浜原発にも触れています。

   東北に暮らす三人の歴史家と科学者一人が大震災を歴史の中に位置づける。
   津波の伝承と歴史記録から原発を批判する岩本先生。 潜水海底調査で貞観津波の
   痕跡を発見した河野先生。失われた海岸林の歴史を語る菊池先生。震災当日から
   地元消防団員として救援活動をした佐々木先生。
【主要目次】
【略 目 次】
 第1章 400年目の烈震・大津波と東京電力福島第一原発の事故・・・・・・ 岩本由輝
   1.現福島県浜通りは“貞観津波”の激甚地帯
   2.“慶長津波”の到達点をめぐる口碑と記録
   3.400年目の烈震の可能性の認識は意外なところに
   4.原発の事故への心配は杞憂ではなかった
   5.この一年あまりをふりかえって
 第2章 仙台湾海底遺跡の発見と仙台平野を襲う大津波(貞観津波)について
                                       ・・・・・・・・・ 河野幸夫
   1.仙台湾海底遺跡調査と大根堆
   2.貞観津波のシミュレーションについて
 第3章 失われた黒松林の歴史復元
       ―仙台藩宮城郡の御舟入土手黒松・須賀黒松―・・・・・・・・・・・・ 菊池慶子
   1.仙台市宮城野区中野・蒲生・岡田地区の現在
   2.藩政期の村の開発と松林
   3.御舟入土手黒松の成立
   4.須賀黒松の成立
   5.幕末の黒松林の動向
   6.黒松林の管理と利用
 第4章 消防団体験から書き起こす東日本大震災
       ―仙台平野にみる津波シミュレーションの功罪―・・・・・・・・・・・ 佐々木秀之
   1.東日本大震災における消防団員としての私の行動
   2.蒲生地区の歴史津波と現代における津波シミュレーション
   3.被災地・蒲生地区における町内会長の取り組み
 第5章 口碑伝承をおろそかにするなかれ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 岩本由輝
   1.『理科年表』における記述の変化
   2.寺田寅彦にとっての地震と災害
   3.「想定外」と人災
   4.114年前の「変動地調査報告」と高浜原発
【書 評】

『史学雑誌』5月号 「2014年の歴史学界―回顧と展望」

2014年も東日本大震災にかかわる書籍の刊行が続いた。@岩本由輝編『歴史としての東日本大震災』(刀水書房,2013),A奥村弘編『歴史文化を大災害から守る』(東大出版会),B国立歴史民俗博物館編集・発行『歴史にみる震災』である。
 @は「口碑伝承をおろそかにするなかれ」という副題どおり,貞観津波,慶長津波など過去の津波被害に関する口碑伝承の掘りおこしとその意味を明らかにした迫力ある一冊。古代の貞観津波について河野幸夫「仙台湾海底遺跡の発見と仙台平野を襲う大津波(貞観津波)ついて」を収録。貞観津波・慶長津波・八重山津波に対するネガティブ・キャンペーンの実情を知ったが,それに冷静に対処するには,言うまでもないが歴史学だけでなく自然科学を含めた幅広い学問分野の連携が必要である。

『民俗文化』第26号 抜刷 近畿大学民俗学研究所  評者:岩間剛城

岩本由輝編『歴史としての東日本大震災 口碑伝承をおろそかにするなかれ』 ⇒全文

「図書新聞」 2013.5.25 No.3111                        評者:岩鼻通明

過去の記録や口碑伝承から東日本大震災を分析する―被災地発かつ被災者の手による、歴史学・民俗学的な分析視点!
東日本大震災から早くも二年が過ぎ、巷には大震災関連の出版物が数多く出回り、中には便乗本まであるという。その中で、半年ほど前から予告を目にして刊行が待ち遠しかったのが本書である。・・・(略)・・・さて、本書は被災地の仙台にある東北学院大学のスタッフの手によるもので、この大学自体も大震災によって大きな被害を受け、いわば被災地発かつ被災者の手によることが大きな特色となっている。そして、その分析視点は歴史学および民俗学的であり、・・・(略)・・・口碑伝承の重要性を指摘した本書は震災研究において画期的な意義を有する。岩本氏は伊達正宗の治世に仙台平野を襲った慶長津波の記録に着目し、とりわけセバスチャン・ビスカイノの『金銀島探検報告書』をめぐる誤読が慶長津波のネガティヴ・キャンペーンに結びついていることを明らかにした。・・・(略)・・・河野幸夫氏は、自然科学者として貞観津波の研究を進める中から、今回の大震災にともなう津波襲来の可能性を事前に予測されていた・・・(略)・・・菊池慶子氏は、仙台平野沿岸部で江戸時代を通じて、営々と植林された黒松の沿岸林の多くが大震災で失われたことを受けて、震災前の沿岸林の景観と歴史的に形成されてきた沿岸林の環境を復元した。・・・(略)・・・佐々木秀之氏は、大震災時に被災地の消防団員として活動した記録を中心に、震災復興をも含めて論じており、前述の津波シミュレーションの矮小化が被害を拡大したことと、震災復興においても自治体のばらばらな対応を批判的に指摘している。・・・(略)・・・随所に小気味よい権力批判を織り込みながらの論述は大いに共感を呼ぶものであり、真の復興に欠かせないものであると痛感した。過去の教訓を未来に生かすという意味からも、多くの人々、とりわけ現代科学が万能であると信じ切っている若者に一読をおすすめしたい。

「河北新報」 2013.3.11

東北学院大の名誉教授と教授ら4人が、東日本大震災を検証し、口碑伝承が生活を守る知恵であったことを専門知識や文献研究、取材、実体験を踏まえて解説した。副題の「口碑伝承をおろそかにするなかれ」が象徴するように、言い伝えを重くみていれば、「想定外」という言葉が安易に発せられることはなかったのではないか。災害とどう向き合うべきかを問う、警告の書とも言える。・・・略・・・さらに、「理科年表」で慶長津波(1611年)と明和八重山津波(1771年)などの記述を調べた結果、口碑伝承は無視され、記事や数字は中立的ではなく、矮小化されているのではないかと疑問を呈している
【著者紹介】
岩本由輝 いわもとよしてる
 東北学院大学名誉教授

河野幸夫 こうのゆきお
 東北学院大学工学部環境建設工学科教授

菊池慶子 きくちけいこ
 東北学院大学文学部歴史学科教授

佐々木秀之 ささきひでゆき
 東北学院大学東北産業経済研究所特別研究員
 HOME  会社案内 | 近刊案内 | 書名一覧・索引 | 注文について | リンク集
Copyright (c) 2005 Tosui Shobo, Publishers & Co., Ltd. All Rights Reserved