史料・目録 
イタリアの黒死病関係史料集 イタリアの
黒死病関係史料集



石坂尚武編訳


定価: 本体14000円+税
2017年12月刊
ISBN978-4-88708‐435-3
A5 800頁

在庫あり
2018年度日本翻訳家協会賞「翻訳特別賞」受賞

本邦初のイタリアの黒死病(ペスト)関係史料の翻訳。時代は中世末期(14世紀)〜近世の,年代記・日記・覚書き・都市条例・書簡・例話・教会の台帳・絵画注文の規約書・市民が書いた遺言書等々多岐にわたり,原典はラテン語・イタリア語計51点。本書による今後の中・近世史の新展開が期待される


◆史料の言語の内訳はラテン語史料41点,イタリア語史料10点である。
  すべて原典からの翻訳である入手しにくい史料のほか,内容的に貴重な史料も
  少なからず含められている
◆これまで日本で黒死病関係の史料として引用される原典は,ボッカッチョの『デカメロン』の
  序文ばかりであったのが,本書の刊行によって非常に史料の幅が広がる
◆翻訳が平易で大変読みやすい
◆黒死病の出来事を記載した年代記の記事などの短い史料のほか,第10部『死者台帳』の
  ように初出の研究雑誌で87頁に及ぶ1点の史料もある。何点かは,古文書館に依頼して
  史料を得たものもある(サン・ジミニャーノ古文書館の契約書,ローディ司教館の遺言書
  など)
◆「比較参考史料」としてフランス,イングランド,ドイツなどの史料を加えることで,イタリアの
  史料と比較した(第7章,第15章)
【略目次】
第1部 1347年の黒死病の到来
第2部 1348年の黒死病に襲われたイタリア中部(トスカーナ地方)
第3部 黒死病とサヴォイア公領のユダヤ人の迫害
第4部 例話に見る心性――高まる煉獄への恐怖
第5部 コムーネの疫病条例
第6部 トレチェントの黒死病を生きた人文主義者ペトラルカ
第7部 いかにして疫病に対処するか
第8部 ルネサンス人文主義者の疫病論
第9部 大規模ペスト期の苦難を生きる
第10部 『死者台帳』
第11部 大規模ペスト期の市民の遺言書
第12部 15世紀の黒死病――小規模ペスト期
第13部 黒死病と絵画の注文
あとがき/注・参考文献(欧文・和文)

翻訳特別賞受賞

 「涙なしには読めない悲惨な記録」 石坂尚武

 日本ではほとんど注目されない黒死病(ペスト)関係の資料が、日本翻訳家協会の審査員の皆様に注目されて驚いています。ペストは、日本では明治期になって発生したものの、局地的で即座に食い止められましたが、ヨーロッパでは、まず14世紀半ばの最初の黒死病で住民の半数の人々が命を奪われ(最近の研究による)、その後16世紀まで数年から十数年毎に大量の死亡者を出し、それは数世紀にわたって死亡率の第1位または上位を占めるものでした。しがたって、人びとが抱く黒死病への関心は非常に高く、多くの人びとがその対処策についてあれこれ思案し、さらに子孫や後世に伝える多くの記録を残してきました。それは、しばしば涙なしには読めない悲惨な情景を記録しています。あまりの大事件であったことから、ほとんど書かずにはいられなかったものです。
 本史料集は、イタリアで発生した黒死病について(若干ながら英仏も含む)、同時代の人びとが報告したそうした記述を解説や考察を加えて紹介したものです。史料の言語の内訳は、全51点のうち、ラテン語史料41点、イタリア語史料10点です。史料が書かれて地域もイタリアのほとんどの地域に及び、史料の種類も年代記、家族の記録、遺言書、書簡、医学書、都市協議会の議事録・法令、絵画の注文書など多岐に及びます。
 これまでの歴史学は政治史中心であったことから年代記ばかりに関心が向けられてきましたが、社会史が重視されるようになり、幅広く人びとにダメージを与えた黒死病が注目され、その社会的影響が再認識されるようになりました。この意味で本書の史料が多くの分野で利用・活用されることを願う次第です。
 なお、本史料集をベースにして私がルネサンス期の黒死病そのものについて論じて出版したのが、『苦難と心性―イタリア・ルネサンス期の黒死病』(刀水書房、2018年)であり、両者は姉妹作をなすものです。

【編訳者紹介】
石坂尚武 (いしざか なおたけ)
1947年千葉県生まれ。
現在,同志社大学教授。博士(文化史学:同志社大学)
著書:『ルネサンス・ヒューマニズムの研究』晃洋書房,1994年/『地獄と煉獄のはざまで』知泉書館,2016年,他多数
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