世界史の鏡 環境1巻
歴史を変えた火山噴火 歴史を変えた火山噴火
自然災害の環境史

石 弘之著


定価: 本体1600円+税
2012年1月刊
ISBN978-4-88708-511-4
四六判並製 181頁

在庫あり
◆ 環境史からの新しい知見!◆
火山噴火が人類の歴史に与えた影響を辿る、最新の環境史誕生。七万年前のトバ噴火は甚大な 被害を人類にもたらし、近くはナポレオンのロシア遠征失敗は噴火による“火山の冬”が原因 ・・・等々。終章では、巨大噴火の可能性がある世界各地十一か所の火山(日本は鹿児島姶良カルデラ)を紹介する
【主要目次】
【略 目 次】
第一章 火山噴火と人類
第二章 「火山の冬」と気候変動
第三章 火山噴火が衣服を発明した
第四章 九州南部の縄文文化を崩壊させた鬼界カルデラ
第五章 文明を崩壊させたサントリーニ島火山 
第六章 タイムカプセルのヴェスヴィオ火山
第七章 西暦五三五年に何が起きたのか
第八章 夏がこなかった年
第九章 史上最大級の噴火−自然の回復
第十章 二○世紀の火山噴火
終 章 悪夢の時限爆弾
【書  評】

都市問題 2012年7月号 書評より

避けられぬ火山噴火―人類の歴史、文明の歴史に与えた影響とは(略)人間の活動にともなって生じる環境問題についての書籍や評論を多数著している。本書は、火山噴火というそれ自体は「自然災害」が、人類の歴史に与えて来た影響を取りあげている。(略)本書を通じて著者が紹介している第一のポイントは、火山噴火が全地球の気候の変動に大きなインパクトを与える点だ。中世のヨーロッパでは、何度か大きな凶作があり、ペストの流行なども重なって人口の大きな減少という事態が生じた。(略) 本書で著者が紹介する第二のポイントは、大規模な火山の噴火は、いずれ必ず起こるということだ。(略) 本書で筆者は、有史以前、そして有史以来の、世界各地での大きな火山噴火を概観し、紹介している。読み進むに従い、評者としては、いつ起こるかわからない次の大噴火に際して、どのように手を打って備えるべきなのか、少々の焦燥感を感じたのも事実である。だが、著者も、「以前に比べ噴火予知は進んできたとはいえ、噴火時期や規模の特定はまだかなりむずかしい」としているとおり、自然の驚異が牙をむくとき、その前で人間はいかにも無力である。せめて採り得る対策は、当たり前のことではあるが、現在の技術力で行える観測の徹底と、それを確実に伝達することであろう。先にも触れたフィリピンのピナツボ山の1991年の噴火の場合、火山付近での残層地震や地殻変動の兆候があった時点で避難勧告が出されたため、人的被害は少なく済んだことを著者は紹介している。また、日本でも2000年の有珠山噴火に際して緊急火山情報(現在の噴火警報)が出され、最大約1万6,000名の住民が適切に避難できたことにも触れている。そして著者は、「噴火の可能性予知」の精度向上を期待して、本書を結んでいる。
                    評者:下田雅己(後藤・安田記念東京都市研究所研究員)

図書新聞 2012.6.16 No.3066

「地球」が生きていると実感することから自然災害を考えるべき―火山噴火の歴史を、二○万年によぶ人類史と重ね合わせながら論述―3.11東日本大震災は、いまだ大きな傷痕を残し続けながら、発生から一年が過ぎたことになる。
自然災害の脅威をまざまざと見せつけられたわたしたちは、いまあらためて「巨大な自然の営み」について考えを巡らす時だと思う。といっても、災害をいかに未然に防ぐかといった視線からだけではなく、著者が述べるように「『地球』が生きている事を実感」することから、まず始めていくべきである。わが国は、地震列島とも火山列島とも称されるが、著者はそのことを「宿命」と捉えていく。・・・略・・・本書は、書名のとおり火山噴火の歴史(二一○万年前の火山噴火まで遡って叙述されている)を、二○万年におよぶ人類史と重ね合わせながら、論述していく。
わたしが本書から真先に受けた衝撃は、「火山の冬」ということだ。・・・以下略・・・  
                                              評者:皆川 勤

『週刊朝日』2012年3月30日 「週刊図書館―話題の新刊」より

人類は実は,火山の近くに住みつき,文明を築いてきた。火山が生まれるプレート境界付近には地下水が豊富で,畑に適した土地が広がる。また,さまざまな有用な金属や石油などの地下資源もあるのだ。本書は火山と人の関わりから歴史を見直した本だ。(中略)加えて本書は大地震と連動する富士山の可能性にも言及している。歴史を変えてしまうほど強力な火山噴火の恐ろしさとともに,歴史の新しい見方も教えてくれる一冊だ。              
                                             評者:土屋 敦

KINOKUNIYA
書評空間BOOKLOG 2012年2月21日 評者 今井 顕

【著者紹介】
石 弘之 いし ひろゆき

1940年東京生まれ。
東京大学卒業後、朝日新聞社でニューヨーク特派員、編集委員などを経て、85〜87年国連環境計画上級顧問。
96年から東京大学大学院教授、ザンビア特命全権大使、北海道大学大学院教授他歴任。
『地球環境報告』『私の地球遍歴―環境破壊の現場を求めて』『火山噴火・動物虐殺・人口爆発』
『名作のなかの地球環境史』等、著書多数
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