世界史の鏡 都市3巻 | |
ジハードの町タルスース イスラーム世界とキリスト教世界の狭間 太田敬子 定価: 本体1600円+税 2009年7月刊 ISBN978-4-88708-508-4 四六判並製 157頁 在庫あり |
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ジハード=「聖戦」の前線基地! (ジハードとはイスラーム教の拡大とその防衛のための戦い) イスラーム世界が始まって間もなく、8世紀末の事、キリスト教世界の最前線ビザンツ帝国との境界の小さな町タルスースは町ごと“ジハードのための前線基地”となった。10世紀半ば過ぎまでの約200年間、町は人口の大部分がイスラームの敵キリスト教徒と戦う戦士。場所はアナトリア半島の南東の付け根。今はトルコ共和国。かつて、パウロが生まれた町として(聖書ではタルソス)知られている。「タルスースでは住民全体が戦闘員としての能力と気概を持って常に戦闘の準備をしていた・・・」この町の人々はどこから来て、何を考え、日頃はどのような生活をしていたか? イスラームとテロリストを混同せざるを得ないような事件が頻出する現在、イスラームの“聖戦”の本来の意味を問いながら、この稀有な町の歴史を紐解いてみよう |
【主要目次】 | ||
エピソード 1 聖者イブラーヒーム 第一章 境界域の都市タルスース小史 1 イスラーム都市タルスースの建設 2 ビザンツ境界域の中心都市への発展 3 カリフ政権の衰退とタルスース エピソード 2 タルスース陥落の情景 第二章 タルスースの都市社会 1 タルスースの都市社会 2 タルスースの住民 3 タルスース社会の特徴 第三章 歴史におけるビザンツ境界域 1 「ルームとのスグール」の範囲と構造 2 スグールの成立と発展 3 アッバース朝政権とスグール再建事業 4 ムスリム勢力の後退とスグール 第四章 タルスースの歴史が語るもの 1 「辺境」や「境界」を巡る諸問題 2 「辺境」都市タルスース |
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【書 評】 | ||
『図書新聞』2009.10.24 書評より 評者:皆川 勤 「ジハード」は,「聖戦」という訳語をもつ,イスラーム原理主義者の過激テロを総称するものとして理解されているが,イスラーム世界においては,長い歴史のなかで培われてきた信仰の表象としてある。本書は,時間を遡及させて,「ジハード」の祖形を描出し,現在の混迷するイスラーム対キリスト教世界,あるいは対ユダヤ世界の深層を切開する方途を示している。・・・中略・・・さて,本書の眼目,八世紀末から十世紀半ばまでジハードの町としてあったタルスース(現在,トルコ共和国中南部にある人口23万人ほどの都市で,聖パウロ生誕の地として知られている)をめぐる歴史的記述において,著者が,めぐらす思考する方位は,「境界域(スグール)」ということになる。・・・中略・・・著者が,本書で提示する「辺境」,「境界」という問題は,現在の欧米(キリスト教,ユダヤ世界)対西アジア(イスラーム)という構図を解析するための示唆的な視線だといえる。・・・中略・・・「タルスースはムスリムの心の中で,ジハードの町,特別な宗教的意味を持つ境界域の町として伝説化されていった」(「同前」)と,本書の最後で著者が述べていることは,感慨深い。 『出版ニュース』2009年9月下期号より ・・・前略・・・8世紀末,キリスト教世界の最前線ビザンツ帝国との境界にあたる小さな町タルスースは,ムスリムにとってのジハードの前線基地として位置していた。本書は,このジハードの町においてムスリムがいかなる社会を形成し,人々がどのようなアイデンティティやイデオロギーに基づいて活動し,他の地域と何が違っていたのかを考察する。・・・中略・・・ジハードの意味を問うイスラーム史研究の新たな境地。 『読売新聞』2009年9月20日 「本よみうり堂」より 評者:本郷和人 ジハード,聖戦ということばは昨今のニュースでもしばしば耳にする。イスラム教徒の異教徒に対する戦いであり,一身を犠牲にすれば栄誉ある殉教と見なされ,天国に行けると考える。かつてシリア北方ではイスラム勢力とキリスト教を信じるビザンツ帝国が衝突をくり返していた。この地域にあって,9,10世紀にジハードの町として栄えたイスラム都市がタルスースである。(以下略) |
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【著者紹介】 | ||
太田敬子 おおたけいこ 北海道大学教授/前期イスラーム時代中東史 2009年7月現在 |
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