世界史の鏡 環境9巻
森と川 森 と 川
歴史を潤す自然の恵み

池上俊一


定価: 本体1600円+税
2010年3月刊
ISBN978-4-88708-507-7
四六判並製 151頁

在庫あり
“森と川”から描き出した中世ヨーロッパ世界の実像

ヨーロッパ中世の人と自然の関係を,多くの資料から分かり易く解き明かす。
ここから新しい環境史が展開する
【主要目次】
第一章 森と川の法と権利
  1 森は無主地か王の所有地か
  2 封建社会の河川
  3 森と川の交通
第二章 自然の恵みを集める仕事人たち
  1 森の民
  2 川の民
  3 修道士と隠修士
第三章 森と川を守れ!
  1 都市民にとっての森と水
  2 神々と妖精の棲まう土地
  3 エコロジー思想の源泉か?
【書  評】
『歴史学研究』2010.6. <史料・文献紹介>から

自然と人間の関係に主眼を置く「環境史」,あるいは「環境歴史学」は,歴史学の一分野として近年活況を呈している。自然科学の専門家が加わっての学際的論文集の刊行,学術誌における特集などの形での研究成果が公になる事例は,枚挙に暇がない。しかしその一方で,西洋前近代史に限定するならば,日本語媒体でヨーロッパ地域全体を視野に含めた単著は,イングランド史を除きほとんど刊行されていない状況にある。本書は叢書「世界史の鏡」環境部門の口切りとなる1冊として,森と川に焦点を据え,中世ヨーロッパの法的制度,人々の日常生活,そして心的世界における両者の一づけの素描を試みている。・・・中略・・・中世における自然環境の管理・保護規定と現代における自然保護思想とを短絡的に結びつけるのではなく,前者の背景に存在するその種の重層的な自然観の一端を掘り下げることにより,本書は,「ヨーロッパ中世」という特定の時代・地域における自然と人間の相互関係の一端を,より立体的な形で読者に提示することに成功を収めているように思われる。一般書という体裁をとっていることもあり,特にヨーロッパ中世という著者(そして評者)の専門外の読者にも気軽に手にとってもらいたい一冊である。・・・後略・・・                                                     (評者:成川岳大)
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