世界史の鏡 情報4巻
中国明末のメディア革命
庶民が本を読む

大木 康


定価: 本体1600円+税
2009年2月刊
ISBN978-4-88708-506‐0
四六判並製 160頁

在庫あり
何と500年前。明代末の嘉靖元年、つまり1522年以降の中国で絵入り小説が大流行。庶民が本を読み始めた! 中国の明末の出版界を一言で言うならば「多・大・速」。書物の様性、規模企画の出現、そして、出版度=スピードアップ! 正に「多・大・速」のメディア革命が実現したのである。絵入りの『三国志演義』『水滸伝』『西遊記』etcの出版が始まった・・・。
【主要目次】
はじめに
     漢籍コーナー
     鉄の扉を開けると
     「メディア革命」とは
第1章 中国書籍史における明末
     「陀羅尼」に始まる印刷
     仏教の世界と印刷術
     馮道と印刷術
     唐・宋の印刷需要
     宋代、印刷本の普及
     明代、嘉靖・万暦期の大変化
     顧炎武の蔵書
     明末、出版文化人の登場
     大規模な叢書の刊行
     明末の読者と書物の価格
第2章 書物の形態の変化 線装の成立
     紙の発明
     書物の形態と印刷術の発明
     巻子本の読みにくさ
     冊子本の誕生
     「全相平話」
     胡蝶装
     線装の始まり
     明朝体の完成
第3章 図像の氾濫
     絵入りの本は俗
   文集の肖像
     いつごろから?
     図への賛と賛を書く人
   画本の時代
     『明状元図考』
     名所の図
     詩詞の図
     絵と文字の関係
   『三才図会』の登場
第4章 小説の爆発
  中国における虚構作品の成立
     長編作品の誕生
     おびただしい『三国志演義』『水滸伝』『西遊記』の版本
     白話の作品であること
     娯楽的文学
     小説が売れたこと
     小説の内容の豊富さ
     明末に小説が爆発的に出るようになったのはなぜか?
     読者としての知識人
   小説批評の誕生
     馮夢龍の評点の特徴
     金聖歎の『水滸伝』
   小説の挿絵
   戯曲の問題
終 章 出版と明末社会
     明末出版の「多」「大」「速」
     董家焼き打ち事件
     東林・復社の世論形成
あとがき
【書  評】

『文藝春秋』2009年6月号「BOOK倶楽部」より

「メディア革命」とは中国の明朝末期に多くの書物が出版されるようになったことを指す。
それは日本の図書館においても,それらすべてを貴重書扱いできなくするほど爆発的な分量であった。・・・略・・・こうした変化を支えたのは,当然ではあるが購買層の増加であった。皇帝を頂点とする官僚・地方の有力者・大商人ら支配階層はいつの時代も書物の購読者であった。・・・略・・・正史『三国志』は明末に『三国志通俗演義』となって初めて人々に受容され,愛好された。・・・略・・・庶民が本を盛んに読み始めるのは,日本では中国より百年以上遅れた江戸時代の中期以降のことであった。・・・略・・・文化とは何かを,発信する側ばかりではなく受け取り手の側から再考してみる。それはまことに興味深い作業である。本書はその際の,実に確かな足がかりを提供してくれる。                評者:本郷和人
【著者紹介】

大木 康 おおき やすし

1959年横浜生まれ。
東京大学大学院人文科学研究科博士課程(中国語中国文学専門課程)単位取得退学。博士(文学)。東京大学東洋文化研究所助手,広島大学文学部助教授,東京大学文学部助教授,東京大学東洋文化研究所助教授を経て,現在,東京大学東洋文化研究所教授
専門は,中国明清時代文学

主 著
『中国遊里空間 明清秦淮妓女の世界』2002年 青土社,『馮夢龍『山歌』の研究 中国明代の通俗歌謡』2003年 勁草書房,『明末江南の出版文化』2004年 研文出版,『原文で楽しむ 中国明清文人の小品世界』2006年 中国書店,『明清文学の人びと 職業別文学誌』2008年 創文社,『中国古典小説選<12>笑林・笑賛・笑府他―歴代笑話』2008年 明治書院,『『史記』と『漢書』 中国文化のバロメーター』2008年 岩波書店
                                                         2009年2月現在
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