世界史の鏡 情報3巻
本を読むデモクラシー 本を読むデモクラシー
“読者大衆”の出現

宮下志朗


定価: 本体1600円+税
2008年3月刊
ISBN978-4-88708-503-9
四六判並製 151頁

在庫あり
西欧の19世紀は、活字メディアの世紀!
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19世紀、活字メディアの世紀にフランスで本や新聞を読む大衆が出現。
この読書のデモクラシーの成立を、同時代の日本−江戸時代との比較も含め幾つかの主題をめぐり論じた、最新の“読書の社会史”
【主要目次】
はじめに
第一章 飛躍的に高まる識字率
       男女の逆転現象
第二章 「読書室」というインフラ
       貸本屋、読書室
       パリにおける読書室の分布
       学生行きつけの「ブロスの文芸室」
       光熱費を浮かせること
       読書室の品揃え
    ☆ケーススタディ ―「ガリニャーニ書店」の場合
       ガリニャーニ、英語新聞を創刊する
       海賊版・パリガイド、そしてリヴォリ通りへの引っ越し
第三章 日本の貸本屋
        「継ぎ本」と「ご用聞き」
       写本も刊本も、貸本屋も版元も
       「かりて損のゆかさるもの」―馬琴と貸本について
       「お仲人」としての貸本屋から文明開化の時代へ
第四章  新旧交代―「新聞連載小説」「青本」「カナール」
       連載小説不適格者―バルザックの場合
       連載小説の王者デュマ、あるいはリサイクルについて
       消えていく「青本」 
       消えていく「瓦版(カナール)」
第五章 文学市場という「デモクラシー」
       市場の芸術家
       印税システムという、文学の「デモクラシー」
第六章 読書する女性という表象をめぐって
       読書室、管理人室
       読書における性差について
       読書という悪徳、「時間のない女性像」
おわりに代えて―「徴候」、そして「聞き書き」という可能性
       「神々は細部に宿るのか」
       「聞き書き」の可能性
あとがき
【書  評】
西洋史学 No.234  2009.9.30 (書評) 

近年,フランスのアナール学派の流れをくむシャルチエやアメリカのダーントンなどの研究が相次いで翻訳され,いわゆる「書物の社会史」が社会史研究のなかでも重要な研究領域となっている。本書はわが国のこのような研究の先導役,紹介者としての役割を果たしてきた著者が,おもに19世紀フランスを舞台にとくに「読者の社会史」の観点から,一般向けにいくつかのトッピクをとおして語りかけたものである。本書はいわゆる学術専門書ではない。2007年11月から樺山紘一編『世界史の鏡』シリーズ (刀水書房) の刊行が開始されたが,本書はそのうちDグループ「情報,コミュニケーションが歴史をつくる」の一冊としていちはやく出版されたものである。・・・(構成と内容の紹介) 略・・・本書を通してまず感じられるのは,著者の語りの滑らかさと問題関心の鋭さや拡がりである。一般読者や学生を対象とした本シリーズの趣旨に沿ったものであるにせよ,平易で親しみやすい文体は,読者を抵抗感なく19世紀フランスの書物や読書の世界に誘引し,最後まで一気に通読させてしまうだけの魅力がある。一方で書物の社会史研究に裏打ちされた基本的な資料やデータがおさえられており,また独自の調査・分析や視角の展開があって,文学者の書いた文章にありがちな主観性や誇張も抑えられている。ただ,全般的には当時政治史や社会・経済史との関連で論じられることが少なく,社会史という歴史的コンテキストを重視する手法からみれば,物足りなさを感じるところもある。・・・略・・・本書は,一般読者向けのいわば啓蒙書であるので,このようなコメントは,望蜀のそしりをまぬがれないかもしれない。・・・以下略・・・  
                                             評者:森原 隆
図書新聞(5月24日号)に掲載されました

図書新聞

本文から・・・

本書はまず、「読むこと」の歴史について知りたいと考える読者にとって、平易でありながら、それでいてよく練られた良質なガイドブックの役割をはたすだろう。(略)舞台は19世紀フランス。そこでは「読むこと」が爆発的に普及する。(略)それまで一部の階級に占有されていた「読むこと」が開放され、さまざまな階層へと広まり、ひとびとが多様な仕方で「読むこと」を実践することになる。それが「読むこと」の民主化である。(略)さらに近世日本の貸本屋と比較し、その共通点と差異を抽出してゆく。(略)著者は最後に、文献史料の不在という与条件を逆手にとって、新たな手法を提案する。それは「聞き書き」である。(略)著者はただこの手法の有効性を説くだけでなく、実際にそれを実践してみせる。探求を自らの実践をとおして語ること。その態度をもし知的誠実さとよぶのなら、それこそが本書の性格を決定づけている力にほかならない
【著者紹介】
宮下志朗 (みやした しろう)
1947年東京生まれ
東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。
中央大学、東京都立大学などを経て、1993年より東京大学教養学部教授。
現在、東京大学大学院総合文化研究科教授(言語情報科学専攻)、放送大学客員教授。
専門はルネサンス文学・書物の文化史。

主著
『本の都市リヨン』(大佛次郎賞受賞)1989年 晶文社、『ラブレー周遊記』1997年 東京大学出版会、、『読書の首都パリ』1998年 みすず書房、『書物史のために』2002年 晶文社、『パリ歴史探偵術』2002年 講談社現代新書、他。
翻訳
ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル』(全5巻) ちくま文庫(刊行中)、モンテーニュ『エセー』(全7巻) 白水社(刊行中)、バルザック《ゾラ・セレクション》(小倉孝誠氏と共に責任編集) 藤原書店 他に、歴史では、L.フェーヴル/H.J.マルタン 『書物の出現』(共訳) ちくま学芸文庫、R.シャルチェ 『読書と読者』(共訳) みすず書房、 N.デーヴィス 『贈与の文化史』 みすず書房、現代文学では、M.トゥルニェ 『イデーの鏡』 白水社、 R.グルニエ 『ユリシーズの涙』白水社、など、多数。
                                               2008年3月現在
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