刀水歴史全書82
人種差別の世界史 人種差別の世界史
白人性とは何か?

藤川隆男著


定価: 本体2300円+税
2011年7月刊
ISBN978-4-88708-398-1
四六判 274頁


在庫あり
時代と共に変化する人間社会・白人性の概念・差別意識などについて、身の回りの差別から始め、世界史の事まで考える。刀水歴史全書72『白人とは何か?』の入門編。
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[著者から]
私たちは、一方では、他人に競り勝とうとすると同時に、他方では、他人と同じように行動しようとして必死になります。自由競争での勝利と社会的標準化の圧力。
本書は、差別と平等が同居する近代世界の特徴を、ファッションなどの身近な問題を取り上げながら、前近代との比較を通じて検討する本です。その過程で、人種主義と啓蒙主義の問題、白人性とジェンダーや階級の問題などを、世界史的な枠組みで解き明かしていきます。
【目  次】

第1部 前近代的差別から近代人種主義へ
ご近所から/エビちゃんは白人か?/用意、スタート!/
ポストコロニアルな八尾市久宝寺 /差別はいつまでも変らないか?/
近代的な人種主義の誕生/ホモ・サピエンスの登場/啓蒙思想と人種分類/
人類と国民/白豪主義/中国人移民制限/黄禍論と平等の原則 /
第2部 変わる人種の意味 
プレイバック/変わる人種の意味/人種概念/白人と白人性/プレイバックPart2/
差別はどこにでもある/なぜ白人性研究なのか?
第3部 差異の自由交換  
印のない(無標の)カテゴリー/アイデンティティ・ラベル/まとめ /研究の手がかり

あとがき/索引/差別関連の歴史年表

【書  評】
西洋史学 No.243 書評より

本書は型破りである。いきなりエビちゃん(蛯原友里)の話から始まり、マライア・キャリー、タイガー・ウッズ、ジーンズ、レギンスにエルメスなど、流行り物に言及したかと思えば、大阪・河内の歴史から著者自身の体験などにまで、種々の話題が飛びかう。しかし、それらは周到に仕組まれた効果的なネタであり、白人、白人性を考えるという本書の主題を支えている。
本書を通して、近年流行になりつつある白人、白人性に関する研究(ホワイトネス研究)が何を問うているのか。そして、それが日常世界や現代社会を考える上でいかなる視角を提供するのかについて、読者とともに考えていこうとするのである。・・・(略)・・・著者が提示するホワイトネス研究は、日常世界とグローバルな構造を繋ぐ非常に野心的で醍醐味のある分野である。と同時に、現代を生きる日本人のあり方への問いかけでもある。今日の世界の不均等構造に目を向けるばかりか、在日韓国・朝鮮人問題や同和問題がほかならぬ日本人(日本での白人的存在)の問題であることを認識せよとの指摘は、アクチュアルな問いにこそ歴史研究の意味があるということだろう。・・・(略)・・・本書は歴史・学問論でもあり、スケールの大きさ、奥行きの深さに圧倒される。歴史学とはもちろんのこと、多くの方に薦めたい。随所に散りばめられた関西(大阪)弁のツッコミも効果的で、かなり重くて深いテーマを扱っているものの、それを楽しんで考えられるよう知的エクササイズに読者はいざなわれ、知らず知らずに藤川ワールドに引き込まれていくような痛快極まる「白熱教室」である。この本、う〜ん、実に面白い(メッチャ、オモロイ)。              評者:細川道久

図書新聞 2011.12.10 3038号

前略・・・本書の著者は、六年ほど前に『白人とは何か?』を編著として刊行している。「人種差別」の歴史や構造を解析するためには、先ず白人≠ニは何かを問うことであるという当たり前のことが、見逃されてきたことを、わたしはその時、知った。藤川がその編著の中で、「未開社会を見る目で白人を観察する」と述べていたのは印象的だった。それは、白人が黒人より優位性にあるという根拠が、そもそも怪しいということを意味するのだ。そしていま、著者は軽快な文体を駆使しながらも、濃密で精緻な論述を以て、本書で差別構造の世界史像を見事に浮き上がらせてくれている。・・・中略・・・人種というものが、著者が指摘しているように「文化的な産物」であり、「恣意的に定めた文化的な分類」であるならば、いずれなんの意味のない空虚な差別認識でしかないことになるはずだ。それでもなお、空虚な差別化が生起するとしたならば、「人類」は悲哀に満ちた存在でしかないといえる。
                                              評者:室沢 毅

出版ニュース 2011年9月中旬号

〈白人性の構造(あり方)は、人種という枠内で処理できるほど単純ではありません。白人という身体から離れて構築されているカテゴリーですから、文化的に操作が可能なので、差異を構成するするさまざまな要素といっしょになり、差異と差別の全体構造を構成しています〉人種差別の世界史を「白人性」をキーワードに解明。・・・略・・・身近な問題から分りやすく近代的な人種主義と差別の構造を浮き彫りに。
【著者プロフィール】
1959年生まれ。
大阪大学大学院文学研究科教授。
著書:『オーストラリア歴史の旅』朝日新聞社(1990),『猫に紅茶を―生活に刻まれたオーストラリアの歴史』大阪大学出版会(2007),『白人とは何か?―ホワイトネス・スタディーズ入門』(編著)刀水書房(2005)他
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