人間科学叢書48 
中世ロシアの政治と心性 中世ロシアの政治と心性


A.A.ゴルスキー著
宮野 裕訳


定価: 本体3,500円+税
2020年4月刊
ISBN978-4-88708-436-0
A5判 220頁

在庫あり

モンゴルの支配下にあったロシア。そこから脱け出してゆく英雄たちの心性史!
イーゴリ・スヴャトスラヴィチ,アクレサンドル・ネフスキー,ユーリー・ダニーロヴィチ,ドミトリー・ドンスコイ。四人の英雄・政治家を描く。モンゴルに苛まれながらも独立へ向かった12世紀〜14世紀中世ロシアの姿を描いた心性史は,新しい魅力に充ちている
【主要目次】
序 章
第1章
 1 イーゴリ・スヴャトスラヴィチ
         ―「謎めいた遠征」を指揮した「無名の公」か?
     若年期のイーゴリ
     武人としてのイーゴリ公
     1185年の遠征
     イーゴリ軍の壊滅
     イーゴリの脱走
     帰国後のイーゴリ
 2 歴史的事件の重要性に関する
          同時代人とその子孫たちによる評価の違いについて
     同時代の年代記におけるイーゴリの遠征
     同時代に及ぼすインパクト
     罪―罰―懺悔―許しの構図
     後世における遠征のインパクトの低下
     後世にインパクトが増大した事例
第2章
 1 アレクサンドル・ネフスキー
          ―英雄か、それとも対敵協力者か?
     ノヴゴロド公となるまで
     ノヴゴロド公としての統治の開始
     ネヴァ川の戦いでスウェーデンに勝利
     ドイツの十字軍騎士団の侵攻
     チュード湖の氷上の戦い
     父ヤロスラフ大公の死
     ルーシ諸公中の「年長者」に
     ウラジミール大公アレクサンドル
     モンゴルを支え、西と戦うアレクサンドル
     アレクサンドルの最期
     英雄か、対敵協力者か
     頼れないカトリック
     アレクサンドルは弟たちを売ったのか?
     「現実主義者」アレクサンドル
 2 祖国を守るということ
     モンゴル侵攻以前の「愛国」の表現
     モンゴル侵攻以後の「愛国」の表現(13〜14世紀)
     14〜15世紀の「愛国」の表現
     ルーシにおける「愛国」の変容
第3章
 1 ユーリー・ダニーロヴィチ―ロシア国家の建設者か、
          それともトヴェリの聖ミハイル公の殺害者か?
     生誕・父の死・大公アンドレイとの戦い
     ライバル・ミハイルとの競合
     ノヴゴロドをめぐる戦い
     逆転のウラジーミル大公の獲得
     コンチャーカの死とミハイルの処刑
     ミハイルの子らとの戦い
     ドミトリーのユーリー殺害とハンによるドミトリーの処刑
     モスクワを北東ルーシ第一の立場へ
 2 「殺人」観の発展
     異教徒が行う処罰としての殺害
     殺害を控える事例の増加
     キリスト教の浸透と殺人の忌避
     モンゴルの征服と殺人観の新たな変化
     ルーシにおける殺人観の変化
第4章
 1 ドミトリー・ドンスコイ
         ―「ルーシのツァーリ」か、それともハンの「臣下」か?
     モスクワの第一相続人になるまで
     大公位相続の失敗
     ハン国の内紛と大公位の獲得
     トヴェリ及びリトアニアとの戦いの始まり
     大公位の奪還
     北東ルーシ軍事同盟の結成
     ママイとの衝突の頻発
     クリコヴォの戦い
     ママイの敗北とトクタミシュの台頭 
     トクタミシュのモスクワ攻略 
     トヴェリ公ミハイルとの最後の戦い
     トクタミシュとの妥協の成立
     ウラジミール大公位がモスクワの相続物になる
 2 「ツァーリ」と「ツァーリの国」のイメージ
     古代ロシアにおける「ツァーリ」
     一三世紀における「ツァーリ」の意味の変化
     ハン国の「ツァーリ」の宗主権に疑念なし
     「ツァーリ」への抵抗という考えの萌芽
     モスクワ大公が「ツァーリ」と呼ばれ出す
     ツァーリは別のツァーリに従属しない
     ハンはツァーリではない―大主教ヴァシアンの理論
     「ウラグ川」後のツァーリの称号の定着の過程
     モスクワ大公家は元々ツァーリの血筋
     政治の現実とメンタリティの相互影響
結 論
【訳者紹介】
宮野 裕 みやの ゆたか
1972年東京都に生まれる。
1999年北海道大学大学院文学研究科博士後期課程西洋史学専攻退学。
2006年北海道大学より博士(文学)取得。
2010年より岐阜聖徳学園大学教育学部に在職、同大学教授。著書:『「ノヴゴロドの異端者」 ―ロシア統一国家の形成と「正統と異端」の相克』(風行社 2009年),訳書:J.フェンネル『ロシア中世教会史』(教文館 2017年),他
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