人間科学叢書44 
階級という言語 階級という言語
イングランド労働者階級の政治社会史
1832―1982年


G.ステッドマン・ジョーンズ著
長谷川貴彦訳


定価: 本体4,500円+税
2010年7月刊
ISBN978-4-88708-390-5
A5判 308頁

在庫あり

◆ イギリスのニューレフト史学の記念碑的著作!
本書は,チャーティスト運動,ミュージック・ホール,労働党などを対象にしながら,19世紀から20世紀にかけての イングランド労働者階級をめぐる言説と実体の関係を再考して,多元的な「階級という言語」の存在を明らかにしようとした著作である。とりわけ,チャーティズムをめぐる分析では、言語は実体を反映するものではなく,実体に先行して意味内容を規定するという言語認識を歴史分析に応用,歴史学における言語論的転回を示す象徴的作品となった。エドワード・トムスン『イングランド労働者階級の形成』(1963年)に見られたような「階級」に対する社会史的アプローチを乗り越えようとする著者の一貫した姿勢によって,本書はイギリスのニューレフト史学の記念碑的著作と見なされ,歴史学のみならず社会科学一般さらには現代政治にも大きな影響を与える事になった。
【主要目次】
日本語版への序文
序 論
第1章 階級闘争と産業革命
第2章 階級表現か社会統制か?
      ―「余暇」の社会史をめぐる研究批判
第3章 チャーティズム再考
第4章 ロンドンにおける労働者階級の文化と政治、1870〜1900年
      ―労働者階級の再形成に関する覚書―
第5章 なぜ労働党は混乱しているのか?
[訳者解題] ニューレフト史学の遺産

【書 評】
社会経済史学 77-2 2011年8月 書評より

イギリス労働史・社会史の名著、待望の邦訳である。原著の刊行から四半世紀余りが経過し、遅きに失した感はあるものの、力量豊かな訳者の手による解題とともに、この名著に触れる機会が多くの読者に開かれたことを喜びたい。ただし、本書を読む際には、時間的なギャップを常に意識しておく必要がある。著者自身が延べるように、1974〜82年に世に出た論考の集成である本書は「論文の日付に注意して読まねばならない」のに加えて、原著刊行後に生じた「アプローチの方向性の変化」も無視できないためである。本書から浮かびあがるのは、方法論的多元主義者としての著者に他ならない。著者の到達点を知っておくために、「日本語版への序文」は必読である。・・・以下略・・・              評者:小関 隆

図書新聞 No.2988  2010.11.6

20世紀後半にイギリスで隆盛したニューレフト史学において,エドワード・トムスン『イングランド労働者階級の形成』とならぶ記念碑的作品として知られた本書が,ついに邦訳された。・・・略・・・本書はそのタイトルが示すとおり,従来の労働史研究の基盤となった階級論に基づくのではなく,階級という「言語」を俎上に載せた先駆的な研究である。
冒頭に置かれた「日本語版への序文」は,1983年の刊行から20年以上を経た時点で書かれたものだが,言語論的転回を踏まえた彼の史学史的な展望が含まれており,興味深い。刊行から時間を経て,本書はさらに古典的価値を高めたといっていいだろう。原著と翻訳のタイムラグが,本書を史学史の激動のなかに位置づけることをより可能にした。・・・略・・・言語をとおして歴史研究と政治分析を重ねた本書の魅力が,そこには遺憾なく発揮されている。                                          評者:米田綱路
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