研究書・論文 
現人神から大衆天皇制へ 現人神から
大衆天皇制へ

昭和の国体とキリスト教

吉馴明子・伊藤彌彦・石井摩耶子編


定価: 本体4,600円+税
2017年4月刊
ISBN978-4-88708-434-6
A5 345頁

在庫あり
宗教学・憲法学・政治学・教育学・歴史学・キリスト教史学……多分野の研究者が“昭和期の戦前・ 戦中・戦後の天皇制の諸側面”を論じた共同研究の成果。象徴天皇制が大きな転機をを迎えた「今」 を読み解く一助に!

戦後70年を過ぎると,あの太平洋戦争体験者は激減し,戦場体験も銃後の生活体験も風化することは避けられない。しかし,「非常時」「挙国一致」の仕組みに天皇制が深くからまり,個人が「ノー」と言えない時代は確かに存在した。それは「向う三軒両隣り」の日常生活の中で,互に協力しつつ互に監視しながら「国民」たらんと振舞い, 「非国民」呼ばわりを避ける時代であった。さらに天皇は現人神として神格化されたから,実質的には「天皇教」ともいうべき国家宗教として機能し,他の宗教者や知識人との間では摩擦,妥協,合理化などのゆがみを生むことは避けられず,その後遺症や責任問題も問われることとなった。また朝鮮,中国その他アジアの国々に加害者として振舞った責任も大きい。
第X部で指摘されたように,植民地朝鮮のキリスト者と対比したとき浮き彫りになる,当時のキリスト者,教育者,私たちの親たち祖父母たちの姿を直視しなければならない。……本書が,今なお私たちに巣食っている「内なる天皇制」とどのように取り組み,今何を為すべきかを考える一助となることを願ってやまない。[編者はしがきより]
【略目次】
【略目次】
 T総 論
第1章 国民統合軸としての「天皇教」―制度の視点から  横田耕一
 U 現人神天皇から象徴天皇へ
第2章 敗戦と天皇の聖性をめぐる政治―「国体護持」と「国体のカルト」の制御  島薗 進
第3章 天皇は人間宣言でどう変わったか  吉馴明子
第4章 敗戦直後の教育勅語の廃止をめぐるキリスト者の言説
                         ―田中耕太郎と南原繁を中心に  石井摩耶子
 V 宗教からみる天皇制の桎梏
第5章 神道指令後における新しい神道の構想―岸本英夫の神道論をめぐって  星野靖二
第6章 村岡典嗣の神道史研究とキリスト教―国体論と宗教理解  齋藤公太
第7章 「大東亜戦争」下の日本基督教団と天皇制
                      ―教団機関紙に見る「日本基督教樹立」の問題 豊川 慎
第8章 賀川豊彦における戦前と戦後のはざま  遠藤興一
 W ケーススタディ:教育・教会・無教会の現場で
第9章 満洲国におけるキリスト教教育と国民道徳―孔子廟参拝強制をめぐって  渡辺祐子
第10章 戦中戦後の同志社と天皇制―湯浅八郎と牧野虎次の時代  伊藤彌彦
第11章 田中剛二と神港教会―戦後、教団を脱退した教会の歩み  吉馴明子
第12章 戦後初期「無教会」にとっての「象徴天皇制」―肯定と批判の意識の交錯  柳父圀近
 X 象徴天皇制の課題
第13章 神権天皇制から象徴天皇制への転換―大衆天皇制の成立  千葉 眞

【編者紹介】
吉馴明子(よしなれ あきこ) 東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学
                  (日本政治思想史専攻),法学博士,恵泉女学園大学名誉教授
伊藤彌彦(いとう やひこ) 東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学
                 (日本政治思想史専攻),同志社大学名誉教授
石井摩耶子(いしい まやこ) 東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学
                   (国際関係論専攻),学術博士,恵泉女学園大学名誉教授
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