研究書・論文 
移動がつくる東中欧・バルカン史 移動がつくる    
東中欧・バルカン史
      


山本明代/パプ・ノルベルト共編


定価: 本体6,400円+税
2017年3月刊
ISBN978-4-88708-433-9
A5 360頁

在庫あり
日本とハンガリーの研究者が,この地域の多元的で混淆的な文化がつくられた過程を,「人とモノ」の移動を通して考察した共同研究
【略目次】
序 文
第一部 移動と地域の変容
第1章 ハンガリーのバルカン半島へのアプローチ    パプ・ノルベルト
第2章 ハンガリーへのクロアチア人移民―16世紀から18世紀    キタニチ・マーテー
第3章 第二次世界大戦後チェコスロヴァキアとハンガリー間の
                              住民交換の社会的影響    山本明代
第二部 地域と諸集団の形成
第4章 18世紀中期ハンガリーの「ギリシア商人」居住地分布
                                ―1755年調査記録から   秋山晋吾
第5章 ハンガリーのクロアチア人エスニック集団の多様性と移住・統合過程
                                         ショクチェヴィチ・デーネシュ
第6章 バルカン地方の野菜栽培人の移動―19世紀から20世紀初頭    木村 真
第7章 クロアチア多民族社会におけるセルビア人の自決権―
                領域的自治の限界か文化的自治のジレンマ    百瀬亮司
第三部 国家と地域
第8章 困難な不均衡―ユーゴスラヴィアの国家形成とマケドニア(1918-39年)
                                            ビーロー・ラースロー
第9章 ボスニア=ヘルツェゴヴィナの国家性―ハーツホーン・モデルを手がかりに
                                            レメーニ・ペーテル
第10章 ユーゴスラヴィア継承諸国における歴史教科書の叙述とその特徴    山崎信一
あとがき [日本とハンガリー全10人の執筆者が本書にかける思いを語っています]
索 引
○本書がより多くの読者のもとに届くことを願って執筆者から

 日本の研究者との共同研究を通して、他の文明の人々についてよりよく理解することができました。息子が日本語を学び始めています。この論文集の刊行によって、日本の読者がバルカン地域とハンガリーについての理解を深めていただけることを願っています。
                                             ―パプ・ノルベルト

 日本の研究者がこれほどにも私たちの地域や歴史、文化に深い関心を持っていたことを知ることができました。日本の研究者から、根気強く勤勉に、そして謙虚に研究を行うことによって、遠く離れた地域についてもよりよく知り理解することができるということを学ぶことができました。―レメーニ・ペーテル

 今日、私たちはユーゴの統合の試みが困難だったことを知っています。発展が遅れた地域を排除せずに、多彩な地域と多様な民族をいかに統合すべきか、……二〇世紀に発展を成し遂げ、秩序を保って互いに敬意を払うことができる日本であれば、この課題を実現できる可能性があることを確信しています。―ビーロー・ラースロー

 この共同研究で、日本を三回訪問し、合わせて一か月滞在しました。日本での滞在を思い出すと、一つ一つの場面とその時の印象がいつも鮮やかに蘇ってきます。最後の日本滞在以来、毎月一度は日本のことを思い出し、再び訪問したいと思います。―キタニチ・マーテー

 二度目の二〇一四年の訪問では、日本をより深く、根本のところから理解する機会を得ました。日本の人々とより近いところで接することができ、日本の文化と日常生活に表れている価値観、伝統と現代が見事に融合した様子を見聞できました。―ショクチェヴィチ・デーネシュ

 近世の人々がどのように生き、どこへ行き、去っていったかを知るためには、文書館に収められた史料を読み解くことが欠かせませんが、現地を訪れてその余韻と痕跡をたどることでその意味と厚みを知ることができます。それを共同研究の仲間たる移民の末裔たちと実現できたのは大きな収穫でした。―秋山晋吾

 近代バルカン半島の野菜栽培に携わる人々の季節労働を通じて、移動のダイナミズムにぜひ注目してください。―木村 真

 セルビアやクロアチアなど、紛争を経験した旧ユーゴ諸国は表面的には「普通の国」になりつつあります。その一方で、紛争からの復興は様々な面でまだ道半ばです。民族主義的偏重を注意深く避けながら、歴史も含めた現地の状況を丁寧に理解していくことが、今後も必要だと思います。―百瀬亮司

 バルカン地域とその周辺の持つ多様なあり方とその多様性の持つ豊かさ、そしてそうした多様な世界を探求する楽しさに、読者の皆さまにも触れて頂けたら、うれしく思います。
                                                 ―山崎信一

 現在、世界中で難民や移民が社会に脅威を与える存在であると捉える人が増え、人の移動が社会の分断を生むような問題として現れています。この論文集はさまざまな時代や人々の移動をテーマとし、移動がもたらす肯定的な側面だけでなく、対立や紛争などの負の側面も扱っています。そのようなテーマを論じながらも、一〇人の執筆者が共有しているのは、東中欧・バルカン地域の多様性の価値と移動が社会にもたらす豊かさです。―山本明代
【編者紹介】
山本明代: 名古屋市立大学大学院人間文化研究科教授

パプ・ノルベルト: ペーチ大学自然科学部地理学研究所、
            政治地理学・開発・地域研究学科長准教授
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