研究書・論文 
国家の周縁 国家の周縁
特権・ネットワーク・共生の比較社会史


田村愛理・川名隆史・内田日出海編


定価: 本体4,500円+税
2015年3月刊
ISBN978-4-88708-421-6
A5 360頁

在庫あり

社会の本質は差異にある。西洋・中東・日本・・・世界の様々な「国」の周辺で差別を逆手に取り,村を越え国境を越え,したたかに生きてきた人びとの諸相

★本書の目的は,近代国民国家によって構造的に周縁化されてきた人や地域の存在に
  焦点を合わせ,新たなまなざしを通じて国家とその周縁の関係の問い直しをおこなうこと
  にある。・・・本書に描かれる人びとの具体的な生き方や心情を聞き取って頂きたい。
  それは,「差別され国家の周縁としてひっそりと生きているマイノリティ」という通常の
  イメージや思い込みを覆すに違いない・・・(まえがき・解題より)
★本章の冒頭で述べたような,かつての部落史の問題点にどれだけ迫れたか心許ないが,
  長吏身分の人びとが戦国末から近世全体を通じて主体的に様ざまな分野で活躍し,
  多様な職分・特権を築いてきた一端を示すことはできたのではないか。農業を始めとする
  生業全般に目を届かせることはできなかったが,差別と貧困・悲惨さのみを強調する
  かつての部落史のマイナスイメージを少しでも是正できれば幸いである。(第3章より)

【略目次】
第一部 周縁と特権
 第1章 近世国家ジェチポスポリタにおける周縁の諸相 : 川名隆史
 第2章 一八世紀のフランス・アルザスにおける密輸資本主義
                       ―周縁と特権の力学: 内田日出海
 第3章 近世東日本における弾左衛門体制
                       ―長吏身分の職分・特権について: 大熊哲雄
 第4章 アンシアン・レジーム期におけるアルザス・ユダヤ人と王権
         ―セール・ベールとストラスブールとの対立を中心に : 川ア亜紀子
第二部 ネットワークと周縁
 第5章 大坂渡辺村皮商人の交易ネットワーク―九州を中心に : 阿南重幸
 第6章 近代ヨーロッパにおけるサヴォワ人の移民ネットワーク―イメージと実態: 尾崎麻弥子
 第7章 行商と古着商―近世江戸とアムステルダムの
             都市内商業における周縁性の比較考察: 杉浦未樹・小林信也
第三部 共生の諸相―周縁を生きる
 第8章 信州松本藩領大町組の被差別民の役割と生活 : 斎藤洋一
 第9章 米国のムスリム―共生に向けての移民・少数派の政治参加: 泉 淳
 第10章 果樹園から―「土着」と「ディアスポラ」 の間に生きるユダヤ教徒: 田村愛理
【書  評】
『史学雑誌』5月号「2015年の歴史学界―回顧と展望」

[総 説]p.4

「周縁」「辺境」をめぐる研究成果としては、(略)また世界史的には、田村愛理・川名隆史・内田日出海編『国家の周縁―特権・ネットワーク・共生の比較社会史』(刀水書房)が幅広くこの課題に迫っている。

[西アジア・北アフリカ(近現代)]pp.304〜305

北アフリカ(マグリブ)については、モロッコとチュニジアに関する論考がめだった。(略)田村愛理「果樹園からー「土着」と「ディアスポラ」の間に生きるユダヤ教徒」(田村愛理・川名隆史・内田日出海編『国家の周縁』刀水書房)は、チュニジアに住むユダヤ教徒個人の語りから、中東や西欧に住まうユダヤ教徒との比較を交えて「土着ユダヤ教徒」のアイデンティティ形成過程を分析する。ローカルなフィールドワークの積み重ねをグローバルな地域理解につなげる優れた実践の成果である。

[ヨーロッパ(近代―ロシア・東欧・北欧)]p.360

次に、上記Aの「国民の社会史」研究に目を移そう。川名隆史「近世国家ジェチポスポリタにおける周縁の諸相」(『国家の周縁』)は、近世ポーランド=リトアニア複合国家における周縁的存在としてのユダヤ人とタタール人に焦点を当て、社団国家的な把握のもとに近世国家が「周縁」を内包させることの政治的意味を論じる。
【編者紹介】
田村愛理 たむらあいり
現在: 東京国際大学商学部教授

川名隆史 かわなたかし
現在: 東京国際大学経済学部教授

内田日出海 うちだひでみ
現在: 成蹊大学経済学部教授
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