研究書・論文 
民族浄化のヨーロッパ史 民族浄化のヨーロッパ史
憎しみの連鎖の20世紀


ノーマン・M・ナイマーク著
山本明代訳
解説―山本明代・百瀬亮司


定価: 本体4,500円+税
2014年7月刊
ISBN978-4-88708-418-6
A5 371頁

在庫あり
第二次大戦以来最悪の戦争,ユーゴ内戦に突き動かされ、「民族浄化」を20世紀ヨーロッパ史の中に跡付ける

◇民族浄化の比較史◇ ナイマークは,本書で民族浄化を20世紀のヨーロッパの歴史のなかに跡 付け,アナトリアのアルメニア人とギリシア人,ユダヤ人に対するナチ党の攻撃,ソ連によるチェチェン人=イングーシ人とクリミア・タタール人の強制移送,ポーランドとチェコスロヴァキアからのドイツ系住民の追放,ユーゴスラヴィア内戦の五つの事例を取り上げている。扱っている時代も1910年代から90年代までの長期に渡る。読者は,オスマン帝国からトルコへの近代国家への転換期に起こった民族浄化の事例から,20世紀末のユーゴスラヴィア内戦に至るまで,時代を超えて共通する特徴とともに,科学技術や国家機構の発展によって,より巧みに組織化されていく近代的な民族浄化の変貌する形態を知ることができる。
◇一人の著者の眼が捉えた20世紀◇ 20世紀ヨーロッパの主要な民族浄化の事例を取り上げた本書は,地域的にも時代的にも広い射程で一人の著者が一貫した論理によって執筆。刊行は2001年だが,その後,英語でも日本語でもこの本に匹敵するものはいまだ刊行されていない。

【略目次】

序 章 民族浄化/二〇世紀/ヨーロッパ/諸事例
第1章 アナトリアのアルメニア人とギリシア人
  オスマン・トルコ人とアルメニア人/青年トルコ人運動/アルメニア人の大惨事/
  ジェノサイド問題/余波/反響/ギリシャ人/ギリシャ人問題/トルコ人の反撃/
  スミルナの大惨事/ローザンヌ条約
第2章 ユダヤ人に対するナチ党の攻撃
  ナチ党のイデオロギー/優生学/移送/バルバロッサ作戦/最終段階/
  ホロコーストとアルメニア人のジェノサイド
第3章 ソ連によるチェチェン人=イングーシ人とクリミア・タタール人の追放
  1944年の追放の背景/チェチェン人とイングーシ人/
  第二次世界大戦中のチェチェン人=イングーシ人/強制移送/余波/クリミア・タタール人
  タタール人の追放/結論
第4章 ポーランドとチェコスロヴァキアからのドイツ人の追放
  ズデーテン地方からのドイツ人の追放/移送/ポーランドの戦時計画/追放/
  脱ドイツ化とポーランド化/結論
第5章 ユーゴスラヴィア継承諸国の戦争
  背景/1980年代のナショナリストの熱狂/ユーゴスラヴィアの戦争/
  ボスニア/レイプ/クロアチア人とムスリム/コソヴォ/結論
終 章 暴力/戦争/全体主義/記念碑と記憶/財産/ジェンダー/未来
解説1 紛争の「記憶」という呪縛―「民族浄化」後の旧ユーゴスラヴィア諸国(百瀬亮司)
解説2 民族浄化・ジェノサイド研究の現状と課題(山本明代)
あとがき
原注
索引
【書  評】

『史学雑誌』5月号 「2014年の歴史学界―回顧と展望」

ノーマン・M.ナイマーク(山本明代訳,山本・百瀬亮司解説)『民族浄化のヨーロッパ史』(刀水書房)は,20世紀ヨーロッパ史に「民族浄化」を位置づけるべく,アナトリアのアルメニア人とギリシア人の事例からユーゴスラヴィア継承諸国の戦争の事例に至る五つの事例を比較して相互の関連性も指摘する。同書には解説として,旧ユーゴスラヴィア諸国を例として,紛争と「民族浄化」の記憶が社会的に共有される経過について論じた百瀬亮司「紛争の「記憶」という呪縛」と,ナイマークの議論の意義と展望について論じた山本明代「民族浄化・ジェノサイド研究の現状と課題」が収められている。
【著者・訳者紹介】

著者:ノーマン.M.ナイマーク
1944年生まれ。
スタンフォード大学歴史学部東欧史教授。専門は,ロシア・ソ連と東欧の近現代史。他に邦訳書『スターリンのジェノサイド』(根岸隆夫訳,みすず書房)がある

訳者:山本明代 (やまもと あきよ)
名古屋市立大学教授。 東欧社会史

解説者:山本明代・百瀬亮司(ももせ りょうじ) 名古屋市立大学大学院人間文化研究科研究員。バルカン地域研究
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