研究書・論文 
イスラーム世界における王朝起源論の生成と変容 イスラーム世界における
王朝起源論の生成と変容

古典期オスマン帝国の系譜伝承をめぐって


小笠原弘幸著


定価: 本体6,000円+税
2014年2月刊
ISBN978-4-88708-417-9
A5 272頁

在庫あり

歴史的事実としての起源そのものではなく,起源伝承を扱った史料の言説から, 古典期オスマン朝における系譜意識,歴史叙述のあり方や,その意義を描き出して新たな可能性を探った挑戦的研究

「オスマン朝の人々は,自分たちの指導者の起源をどのように捉えてきたのか。起源伝承を伝える不整合な,相矛盾し,荒唐無稽ともいえる史書の記述を,先入観を排して検討したとき,そしてオスマン朝だけではなくイスラーム文化圏全体の歴史叙述をも分析対象に含めたとき,新しく浮かび上がってくる論理はないのだろうか。それは,オスマン王家の主張する正統性や自意識にどのように関わってくるのか―これが本書の問いである。本書ではこうした問題意識のもとで,オスマン王家の系譜言説に取り組むこととしたい。」[序論(13頁)から]

【略目次】
序 論 起源をめぐるアポリア/研究史と本書の位置/構成,対象時期,史料/
     オスマン史学概観
第一部 四人の始祖
  第1章 カユとギョク―オグズ伝承的正統の論理
  第2章 ヤペテとエサウ―旧約伝承のなかの王権と権威 
  第3章 始祖たちの融合―「伝統」と「権威」の相克
第二部 二つの王朝
  第4章 セルジューク朝との系譜意識―同族・婚姻関係という作為
  第5章 モンゴル像の変遷―残虐な暴君から賞賛すべき世界征服者へ
結 論 [第一部,第二部でテーマ別に分析してきた検討結果を,
     結論では,オスマン朝の歴史的展開のなかに通時的に位置づけ(T),
     次いでその意味を共時的なかたちで問う(U)]
  T 系譜意識の史的展開
      系譜的権威追求の始まり:オスマン朝の形成期/「伝統」を逸脱した「権威」の追求:
      バヤズィト二世の時代/「伝統」への部分的回帰:イスラーム的世界帝国の時代
  U 変容の原理
      系譜意識変容の軸―「伝統」と「権威」/起源意識と「トルコ人」
補論T 15世紀における王統譜の構造と形成過程
補論U 史料解題
【書  評】

『史学雑誌』5月号 「2014年の歴史学界―回顧と展望」

小笠原弘幸『イスラーム世界における王朝起源論の生成と変容』(刀水書房)は,オスマン王家の系譜・血統にまつわる起源伝承の歴史叙述の変遷を論じる,著者の博士論文の単行本化。近年,西アジア・北アフリカの近現代史では博士論文をもとにした良質な研究書が続々刊行されており,イスラーム時代についても本書がその呼び水になることを期待したい。
【著者紹介】
小笠原弘幸 おがさわら ひろゆき
1974年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。
2013年,九州大学人文科学研究院准教授。博士(文学)
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