研究書・論文 | |
生まれる歴史, 創られる歴史 アジア・アフリカ史研究の最前線から 永原陽子編 定価: 本体2900円+税 2011年4月刊 ISBN978-4-88708-397-4 A5 240頁 在庫あり |
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本書は、アジア・アフリカの様々な地域において、「歴史」がどのようにとらえられ描かれてきたのかについて論じている。焦点を当てているのは、特定の均質的な集団や社会の内部ではなく、伝統的な「帝国」とその周辺に位置する少数民族の接点や、近代植民地主義の影響下の地域社会など、力関係を異にする複数の文化や集団が接触し交渉する場である。歴史を書くことが現在と過去との対話であり、書く者の立場と不可分であることは今さら言うまでもないが、本書でとりあげるような、異質なもののぶつかり合う場では、歴史が書かれる過程はことのほか緊張感に満ちている。 ―「まえがき」 から |
【目 次】 |
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・永原陽子 1 選択される過去 ―北部エチオピアのキリスト教徒の歴史認識―・・・・・・・・・ 石川博樹 2 八〇〇年後の「復讐」 ―西南アジアにおける「ソームナートの門扉」の歴史―・・・・ 近藤信彰 3 清朝とコンバウン朝の狭間にある雲南のタイ人政権 ―1792〜1815年までの国内紛争―・・・・・・・・・・・・・・・・・クリスチャン・ダニエルス 4 植民地期の南インド史記述とその現地的起源 ―「ポリガール」をめぐる諸言説を中心に―・・・・・・・・・・・・・・太田信宏 5 マンドゥメの頭はどこにあるのか ―ナミビア北部・クワニャマ王国の歴史と現在―・・・・・・・・・・永原陽子 6 東南アジアにイスラームをもたらしたのは誰か? ―ワリ・ソンゴの起源をめぐる問題とアラブ系住民―・・・・・・・・新井和広 7 英系ビルマ人の歴史と記憶 ―日本占領期(1942〜45年)とビルマ独立をめぐって―・・・・根本 敬 |
【書 評】 |
『史学雑誌』122-8号 2013年8月20日 「新刊紹介」より 本書は,アジア・アフリカの諸地域に関わる様々な人々が残してきた史料を博捜し,多元的な視点から,まさに歴史が生まれ,創られていく生々しい過程を描き出した,「世界史の生きた現場」へと読者を誘う論文集である。(中略)以上,本書の諸論考は,ナショナル・ヒストリーの枠組みや単純な支配/被支配の二項対立には回収できない,複雑に絡み合った地域の歴史の生成過程を丹念に解きほぐすものである。地域の個性にじっくりと向き合った歴史研究の最前線の成果であり,どのような地域や時代に関心を持つものにとっても,裨益するところの大きな論集といえよう。 評者:小林理修 『週刊読書人』2011.7.15 近年,ドストエフスキーの新訳から東日本大震災の救援情報の多言語化まで,東京外語大が気を吐いている。そこには,AA研(アジア・アフリカ言語文化研究所)というユニークな研究所があり,さまざまな共同研究の先頭に立ってきた。その成果のひとつである本書は,均質的な集団や社会の内部でなく,帝国と少数民族の接点,近代植民地主義の影響下の地域社会,移住民の社会など,力関係を異にする複数の文化や集団が接触する場で,「歴史」がどのようにとらえられ描かれてきたのかを,非文字史料を含むさまざまな「記録と記憶」に分け入ることで明らかにしようとしたもので,7人の著者がそれぞれ1章ずつを担当している。(中略) 本書で扱う研究方法は,学界ではかなり普及しつつあり,専門研究として現時点で圧倒的な斬新さをもつものとは言えないだろう。しかし,一般書に近い形態での出版物として,本書が扱う事例の面白さと読みやすい叙述は,大きなメリットである。ベトナム史を専攻する評者のような,「専門違いの研究者」にとっても,こういう本はとても有り難い。(以下略) 評者:桃木至朗 |
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