研究書・論文 | |
建国初期 アメリカ財政史の研究 モリス財政政策からハミルトン体制へ 松本幸男 定価: 本体6600円+税 2011年3月刊 ISBN978-4-88708-392-9 A5箱 340頁 在庫あり |
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従来重視されてこなかった、モリスとハミルトンの財政政策の連続性が本書で初めて明らかにされる! 独立革命末期の財務総監モリスの政策が、初代財務長官ハミルトンに受け継がれ、厳しい国際・国内環境の中で強力な中央政府を可能にした過程を解明。 |
【目 次】 |
序 章 課題と視角 第1章 植民地経済の発展 第T編 連邦共和国政府形成の動き 第2章 モリス財政政策 第3章 モリス国立銀行政策 (設立案の背後にある構想/正貨銀行か土地銀行か/国立銀行の設立過程・・・) 第4章 モリス「オランダ借款政策−アムステルダム金融市場での起債− 」 (1782年の起債/1784年の起債) 第5章 モリス「新貨幣制度に基づく国立造幣局に関する報告書」の分析 第6章 モリス「公信用に関する報告書」の分析 第7章 中央政府租税案に対する反対 第8章 いわゆる「危機の時代」 第U編 連邦共和国政府の成立 第9章 ハミルトン体制の意義と展望 補論T ハミルトン「国立造幣局に関する報告書」の分析 補論U 第1次合衆国銀行と州法銀行−マサチュセッツ銀行を中心にして 結語 注/文献目録/索引 |
【書 評】 |
社会経済史学 77-4号 2012年2月 書評より 本書は,アメリカ独立革命の末期,連合会議財政の再建の責任者として財務総監に着任したロバート・モリスの財政政策を分析し,初代財務長官アレグザンダー・ハミルトンに受け継がれて「ハミルトン体制」に結実したことを明らかにしようとしたものである。(略) モリスは財務総監就任前の軍需物資調達業務で財を成したこと,財務総監職就任の条件としてビジネスとの兼務を認めさせたことから,しばしば公職と私的利害との混同を批判されてきた。こうした批判を含め,本書はモリス財政の意義と限界を詳細な史料によって検証する。 ・・・中略・・・ ところで,1世紀も前にチャールズ・ビアードが合衆国憲法制定を推し進めた主要利害は公債所有者であったと指摘して以来,論争はなお続いている。本書は,モリス財政の分析を通して改めてビアード説を指示する結果となった。モリスが「共和主義者」であったか「自由主義的共和主義者」(アップルビー)であったかについての検討は本書の課題の外にある。しかし,独立革命期の財政家としてモリスが類い稀なるアイディアと才能を発揮したことは,本書が見事に描いている。(略) とはいえ,疑問の残る点もいくつかある。(略)言うまでもなく,これらの疑問や無い物ねだりは本書の高い実証性に由来している。本書は独立戦争期の財政金融政策史研究の空白を埋め,モリス財政をハミルトン財政に接合した貴重な研究成果である。 評者:須藤 功 『アメリカ学会会報』No.177 2011年11月 書評より ロバート・モリスは財務総監として独立革命末期の連合議会財政の再建に取り組み,一定の成果をあげた人物である。しかしながら,(・・・)1790年代には投機の負債により投獄されるなど,後に不遇の生涯を送った。そのため,合衆国初代財務長官アレグザンダー・ハミルトンに比べ,その人物・政策に関する評価は決して高くない。 本書は,そうしたモリスによる財政構想が,実はワシントン政権下のハミルトンに受け継がれ,「ハミルトン体制」によって結実した,という政策構想の連続性を明らかにしたものである。・・・(中略)・・・「後発国アメリカにおける資本主義の原始的蓄積過程」を明らかにするという分析視角は古典的ではあるが,本書が田島恵児氏の「ハミルトン体制」研究の流れを受け継ぎ,建国期財政史に正面から取り組む極めて重厚で骨太なものであることは間違いない。建国期合衆国史を学ぶ後進にとり,極めて貴重な一冊である。 評者:田宮晴彦 |
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