研究書・論文 
近世日本の地域社会と共同性 近世日本の
地域社会と共同性

近世上田領上塩尻村の総合研究 T

長谷部 弘・高橋基泰・山内 太編
執筆者: 長谷部 弘、村山良之、山内 太、
       田島 昇、マーティン・モリス、高橋基泰

定価: 本体6000円+税
2009年4月刊
ISBN978−4-88708-376-9
A5箱 280頁

在庫あり
☆かつて若き中村吉治を中心に集った東北大の俊秀が、一世代を経て、さらに煙山研究の
  伝統を発展させようとする野心的労作
☆十数年間にわたる現地調査の成果の先ず第1巻の刊行,続巻執筆も進行中

本書は上塩尻村という一つの村を十数年間にわたって調査研究した成果の第一弾である。
徳川時代から明治期にかけて日本の蚕種業の中心地として市場経済化したこの村において、共同性や地域社会は変化しつつもどのような姿をとっていたのか、その原風景を明らかにする。明治維新以降の「近代」とは異質であった社会・経済・地理・行政空間を舞台として、上塩尻村の村行政、自然環境管理、居住、村落内公私関係、人口動態、家の相続や継承が、どのようなものであったのか、膨大な資料を駆使しながら分析する。
【主要目次】
はじめに
第一章 上塩尻村の地理的特徴と耕地利用
 第一節 上塩尻村の地理的特徴(村山)
 第二節 耕地と自然災害(山内)・
第二章 藩政と村落支配行政
 第一節 上田藩の郷方支配と村(長谷部)
 第二節 「村」の機能(長谷部)
 第三節 年貢の賦課と徴収(山内)
 第四節 治水をめぐる藩と村−千曲川、川除普請を事例として−(長谷部)
第三章 居住・生業・共同性
 第一節 木戸は取り払われたのに−「馬入り道一件」をめぐる上塩尻村の行政構造−(田島)
 第二節 蚕種業の展開と住居建築の変容(マーティン・モリス) 
第四章 上塩尻の人口動態(高橋)
 第一節 研究史概観
 第二節 基本データと人口趨勢上の特徴
 第三節 出生について
 第四節 婚姻について
 第五節 死亡について
 第六節 歴史人口学データの応用・展開
第五章 家と相続
 第一節 家族と家系(高橋)
 第二節 家と相続(高橋)
 第三節 家業・家産・家名の継承と相続(長谷部)
索引
【書  評】
歴史地理学 2010年3月No.249 52-2 (文献紹介)

本書は,近世後期の一村落に関する経済史の研究者を中心とした共同研究の成果である。事例とされた上塩尻村は,現在の長野県上田市大字上塩尻にあたり,近世後期から近代にかけて,蚕種業で栄えた村として知られている。しかし本書は,蚕種村の単なるモノグラフとして意図されているわけではない。実に膨大な八つの家文書と区有文書を総合的に分析し,村落共同体と家という古典的な概念を再考することが,編者らの目指す方向である。
  (略)
 ・・・編者らによる「はじめに」が,近世から近代への推移を見据えた問題意識を簡略に述べている。「共同体の解体と近代的個人の形成」といった古典的で大きな理論から歴史を説明してしまうことへの違和感が表明される一方,共同的な諸関係が解体と組織化を繰り返し,無数の社会関係が複雑にからまる共同性の諸相を据えるという野心的な意図が示唆されている。
  (内容紹介略)
 本書が意図する村落共同体の再考が,この概念の単純な否定でも復活でもないことは明白である。むしろ,一つの村の内と外で,様々な人や家の結びつきが形成・維持・衰退を重ねていくという当たり前の事実に気づかせてくれる。 (略) 本書の「はじめに」では,共同体的な諸関係に関心を払わない経済史への違和感や危機感がほのめかされているが,同時に,大きな概念でもって説明してしまうことへの躊躇も表明されている。・・・上記の見識が,分厚い史料調査と共同研究のなかから生まれたことに,敬意を表したい。
なお本書は書名に「総合研究T」とあるように,当上塩尻村の研究は完結したわけでなく,続巻が予定されている。とくに方法論(対比研究)および蚕種業の展開と経済市場化については,第二巻以降で扱われることが予告されている。さらなる議論の展開を期待したい。    評者:米家泰作

史潮 新66号 2009.11.28 (あとがき) 

本書は,小県郡旧上塩尻村(現長野県上田市大字上塩尻)を対象とした共同研究の第一巻である。本巻では,「地域社会と共同性」を切り口として,近世地域社会のあり方を論じており,主な内容は地理・支配行政・公と私・人口・家と相続である。編者の一人,高橋基泰氏は,イギリスの農村家族経済史を専門とされており,執筆者の専門は経済史を中心に,建築学や理学など多様である。
・・・略・・・近年,近世村落史研究自体が,やや停滞した状況にある中で,隣接諸科学の研究者も含む多様な執筆者によってなされた一村実証研究は,刺激的であり,今後参考とするべき研究視角や方法が多々あると思われる。また,本書の実証分析に加わっていないものの,基礎となる調査においては,イギリスをはじめとするいくつかの国々の研究者が参画している。・・・略・・・本書で想定されている読者は,日本近世史を専門とする者だけではない。むしろ,東洋史・西洋史の村落史・経済史研究者に読まれ,対比研究の視点が培われてゆくことが期待されているといえよう。是非多くの方に御一読を薦める次第である。                          評者:山ア久登
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